参議院本会議で代表質問

10月7日 参議院 本会議で岸田総理の所信表明演説に対し、会派立憲民主・社民を代表して質問に立ちました。
★2022年10月 7日 参議院 本会議 Youtube録画 https://youtu.be/rR78n-_i4JA?t=6037

令和4年10月7日(金曜日)参議院本会議(未定稿より)

立憲民主・社民の石垣のりこです。会派を代表して質問をいたします。
総理、まず冒頭、端的にこうお伺いします。
総理はどこにおられるのですか。総理は一体、何をされておられるのですか。

所信表明演説で総理は、世界規模の物価高をはじめ、感染症危機やロシアによるウクライナ侵略など、わが国を取り巻く厳しい現実を列挙し、今、日本は、国難とも言える状況に直面していますと述べられました。
確かに、総理のおっしゃるとおり、今、第2次安倍政権以降の失政の当然の帰結である悪質な円安とインフレ、それに対する岸田内閣の無策などによって国難ともいうべき事態に直面しています。
しかし、参議院選挙後の岸田総理の姿は、国難に直面した一国の総理の姿とは到底思えません。
立憲民主党をはじめとする野党各党が憲法53条の規定に基づいて臨時国会の召集を内閣に求めてから、既に2か月近い時間が過ぎています。この間、総理は、記者会見でメディアの前に姿を現すことはあっても、一切、国権の最高機関たる国会に向き合おうとしませんでした。有権者の代表が集うこの国会から逃げ、姿を隠すことが、国難に直面した日本の総理大臣のあるべき姿なのでしょうか。
岸田総理、総理は所信表明で、国民の皆様の声を正面から受け止め、説明責任を果たし、厳しい声にも真摯に謙虚に丁寧に向き合っていくと繰り返し述べられました。
しかし、総理、有権者の声を正面から受け止めるのは有権者の代表が集まる国会ではありませんか。説明責任を果たすのは記者会見ではなくて、議事録が残り、発言そのものに責任が発生する国会質疑ではありませんか。厳しい声にも真摯に謙虚に丁寧に向き合っていく必要があるのは、国権の最高機関たるこの国会の場ではないでしょうか。その国会に向き合うことがそんなにお嫌ならば、ご無理は申し上げません。即刻、総理をお辞めください。
岸田総理にとって、国民の声を聞くことと憲法53条を無視して国会を開かないことにどのような整合性があるのか、ご見解をお聞かせください。
次に、旧統一教会問題についてお尋ねします。
総理は所信表明の中で、統一教会問題に関し、国民の皆様の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のために各般の取り組みを進めてまいりますと述べられました。
そこでお尋ねします。
総理は、国民の皆様の声がどのようなものであると認識されていますか。また、ここで述べられた説明責任とは、何に関する説明であり、誰に対して誰がどこで行う説明なのでしょうか。さらには、信頼回復のために各般の取り組みが必要なほど毀損された信頼とは、誰から誰に対する信頼のことなのでしょうか。また、統一教会の問題の何がどのようにして信頼回復のために各般の取り組みが必要なほどの信用毀損を生んだのでしょうか。それぞれ具体的に総理の言葉でお答えください。
統一教会問題について、わが立憲民主党は、何よりも被害者の救済が喫緊の課題であるとの考えのもと、悪質献金被害救済法案をほかの野党と協力して今国会に提出し、その成立を与党に働きかけていく所存です。
一方で、新法の成立を待たずとも、現行法の運用で今すぐできることがあります。
先月30日に示された政府の「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議の取りまとめ概要では、相談内容が宗教に関わることのみを理由として消極的対応をしないことなどが申合せ事項となったと記載されています。
これまで、被害者が勇気を出して虐待被害からの救済や生活保護の申請のために自治体などの窓口に相談に行っても、宗教の話になると、信教の自由を盾に行政から受付を拒否されるケースが多いといいます。こうした現場の無理解を即刻改善するためには、関係省庁連絡会議の申合せだけでは足りず、虐待被害者の身体保護や生活保護の申請を受け付ける各自治体等の現場の行政機関に、相談内容が宗教に関わることのみを理由として消極的対応をしない旨の実効性のある通達を内閣として発出することが必須であり、それは今すぐにできる被害者救済策と考えますが、総理の見解を伺います。
岸田総理は、自民党総裁としてのお立場から、かねてより自民党所属の国会議員に対して、統一教会との関係を絶つことを党の基本方針に据えていると述べておられます。
改めて問いますが、自民党の所属議員たるもの、統一教会と関係を絶つべきであると判断されたのはどのような理由からですか。具体的にお答えください。
また、統一教会は、これまで何度も司法の場で、民法715条で規定される使用者責任のみならず、民法709条を根拠として組織としての不法行為を認定されるなど、その反社会性を何度も厳しく指摘され続けてきました。総理ご自身は、こうした統一教会の反社会性についてどのような認識をお持ちでしょうか。具体的にお答えください。
山際大臣に関しては、次々と統一教会との関係が明らかになっています。
統一教会の問題を調査し続けるジャーナリスト複数からの報告によりますと、今日現在まだ明るみになっていない統一教会との接点があるとの情報もあります。もし、今国会中に山際大臣に関してこれ以上の新しい統一教会との接点が判明した場合、岸田総理の更に重大な任命責任が生じると考えますが、総理の見解を問います。
岸田内閣に国政のかじ取りを任せるわけにいかない理由は、統一教会との関係を清算できない点にのみあるのではありません。
山際経済再生担当大臣は、統一教会との不適切な関係だけでなく、保有株式に関する申告を怠っていたという重大な大臣規範違反が判明しています。
秋葉復興大臣に関しては、実体のない政治団体への多額の寄附が問題視されています。さらに、財務省出身で滋賀県の長浜税務署長でもあった寺田総務大臣に至っては、政治資金規正法の主務大臣でありながら、ご本人が代表を務める自民党支部や妻が代表を務める政治団体などに脱税などが疑われる不透明な資金の流れがあるのではないかと報道される始末です。
寺田大臣にお伺いします。その記事をお読みになりましたか。報道内容は事実でしょうか。政治資金規正法等の関連法令違反や脱税について、その事実や可能性はあるのかないのか、明確にお答えください。
総理はこのような閣僚をまだ任用し続けるのでしょうか。総理に各大臣の事案への認識とその任命責任を問います。
また、岸田総理ご本人にも為政者としての素質に疑義を抱かざるを得ない事態が発生しています。総理、内閣法にその職務が、内閣総理大臣の命を受け、機密に関する事務をつかさどり、又は臨時に命を受け、内閣官房そのほか関係各部局の事務を助けると規定され、まさに国政の中枢を動かす権限を有する総理の政務秘書官になぜ31歳の御子息を起用されたのでしょうか。
総理は、衆議院本会議で、適材適所であると抜てきの理由を述べておられましたが、御子息の能力や実績がどのように適材であるのか、この人事が身びいきではない理由は何か、具体的にお示しください。
また、秘書官の俸給を定める特別職の職員の給与に関する法律によれば、総理秘書官の俸給は内閣総理大臣に協議しなければならないとされています。すなわち、総理は御長男の給料をも決める権限があるということです。よもや総理は、自ら国難と規定されるこの状況下で、「わが国」ではなく「わが家」を優先されたのではありませんよね。俸給には月額にして最大およそ30万円もの幅がありますが、まさか同じ総理秘書官となられた事務次官経験者の嶋田秘書官と同等などという事態が発生するのかどうか、具体的にご答弁をお願いします。
インボイス制度の導入が1年後に迫っています。インボイス制度は、ライターや編集者など言論、出版に関わる方々、プログラマーやエンジニアなどテクノロジー産業の基盤を支える方々、あるいは俳優や声優などエンターテインメント業界関係者に多いフリーランスの皆さんや、建設・土建業界に多い一人親方の皆さんなど、個人で仕事を行う立場の弱い人々に大打撃を与えます。
インボイス導入に反対し、制度見直しを求め、声優の方々が結成したVOICTIONの設立メンバー、甲斐田裕子氏によりますと、インボイス制度の導入で、声優のうち2割の方が廃業を検討されておられるといいます。
総理は、所信表明で構造的な賃上げの必要性を訴える中で、中小企業における賃上げや個人がフリーランスとして安定的に働ける環境をつくるとおっしゃいましたが、インボイス制度が導入されることにより、中小企業が活力をそがれ、フリーランスが廃業に追い込まれるならば、矛盾も甚だしいと言わざるを得ません。
立憲民主党は、既にインボイス制度廃止法案を提出しています。この際、中小零細企業を守り、フリーランスの方々が安定的に働ける環境をつくるためにも、インボイス制度は廃止すべきと考えますが、総理のご所見を問います。
コロナ対策について伺います。
5日の衆議院本会議で、第7波における医療提供体制について岸田総理は、重症病棟において35%、コロナ病床全体でも62%と、必要な入院医療を提供することができたと答弁されています。しかし、実態は、ベッドはあっても人手は足りず、救急や通常診療においても医療崩壊というべき事態が生じていたのではありませんか。ある医療関係者は、何度同じことを申し上げればご理解いただけるのかと怒りをにじませながら、国民のお一人お一人の基本的な感染対策に依存するばかりの政府の無策ぶりに苦言を呈しておられました。
総理は、病床使用率と医療現場の逼迫度に乖離があるということを理解されておられますか。次の感染の波が来た際には、どのように医療崩壊を回避されるのか、お答えください。
医療逼迫を防ぐためにも、早期診断、早期診療、治療をして、患者の容体を悪化させないこと、そして感染者を抑制することが重要です。PCR検査を基本とした検査を基軸に据えるからこそ、ワクチンも治療薬も相乗効果が期待できるのです。ワクチン一本足打法から脱却し、検査で感染のもとを断つという当たり前のことを感染対策の基本に据えるべきであると考えますが、感染症の拡大防止のための検査の重要性について、総理のお考えを伺います。
コロナ後遺症やワクチン後遺症にも政府としてもっと積極的に取り組むべきです。
岸田総理は、リーフレットなどで周知を行ってきた、診療の手引きで職場復帰の支援をお示ししていると答弁されています。しかし、厚生労働省のホームページを見ても、後遺症対応の専用ページすらなく、医療者や周囲の理解不足が患者を更に苦しめています。
政府として、自治体のお手本となるような相談窓口を設置するとともに、是非とも後遺症に苦しむ人々に対する支援体制をもっと強化していただきたいと考えますが、総理のそれぞれの後遺症に対する認識と今後の対応についてお聞かせください。
先月末から感染状況の詳細を把握する全数把握が見直され、詳細を把握するのは重症化の可能性のある人だけに限定されました。感染者の総数の把握は続けているとはいえ、第7波で亡くなられた方々のうちおよそ9割は中等症であった事実を踏まえると、全数把握の見直しでこれまで以上に適切な医療につながらず命を落とすケースが増えることが懸念されます。こうした懸念を払拭するためにどのような対応を取られるのか、総理の見解を問います。
次に、東日本大震災からの復興についてお尋ねします。
政府は、ALPS処理水について、昨年4月に海洋放出の方針を決定しました。これまで議論がほとんど共有されないまま、寝耳に水の決定事項として強行されることに断固抗議いたします。
これまで、地元関係者を含め、原発事故でなりわいを奪われた漁業関係者の方々がどのような思いで再生への道のりを歩んでいらっしゃったのか。やっとのことで漁を再開しても、安く買いたたかれ売れなくなってしまった魚を前にどれほどの悔しさをのみ込んできたのか。失われた販路をようやく取り戻した、あるいは何とか取り戻そうと必死になっているやさきに、海洋放出が頭ごなしに決定されたのです。
総理、総理と、政府と東京電力は、福島県漁連に対し、関係者の理解なしにいかなる処分もしないと約束したのではありませんか。にもかかわらず、海洋放出を決定ありきで進めるのは、関係者の理解が得られたとお考えだからでしょうか。関係者の理解が得られていない以上、ALPS処理水の海洋放出は再検討すべきであると考えますが、総理のご所見を問います。
さらに、総理は所信の中で、「東日本大震災という未曽有の国難からも立ち上がることができました」と述べておられますが、東日本大震災からの復興はまだ完了形ではありません。ALPS処理水のみならず、例えば、最終処分場が決まらず行き場を失ったままの放射性の指定廃棄物が1都8県に散在しています。生活再建、心のケアなど、震災復興に関するソフトの面の対応はいまだに不十分です。未来へ向けた希望を語るならば、不都合な事実にも言及し、解決への具体的な道筋を示すべきです。
東日本大震災の被災地である宮城県選出の国会議員として、総理に改めて問います。被災地の現実をいま一度直視してください。その上で、まだ立ち上がることができたと、あたかも終わった話のように言えるのか、ご所見を伺います。
次に、食料安全保障について伺います。
総理は所信で、産業の米と言われる半導体のことは触れても、まさに今収穫を迎えている米に代表される一次産業、農林水産業については言及されていません。食料価格の高騰を日本経済のリスク要因としながら、何とも不可思議なことに、食料生産そのものについてのビジョンは語られていないのです。
農業をはじめ一次産業に携わる方々がどんどん少なくなっています。当事者の皆さんにお話を伺いますと、大半の方が、それだけでは生活していけないからとお答えになります。売れるものを生産せよ、付加価値が高いものを作れと政府は言います。しかし、一次産業は自然が相手です。田んぼに土を盛り、大豆や小麦を植えればすぐに計算どおりの収穫が得られるわけではありません。今年は豊漁でも、来年も続く保証はありません。さらに、大雨や台風などの被害が頻発し、一次産業に大打撃を与え続けています。食料安全保障を考える場合、何より重要なことは、一次産業に携わる方たちが生活の不安なくなりわいを続けることができる仕組みづくりなのではありませんか。
今こそ、例えば農業であれば、多面的機能の維持と食料自給率の向上を目指す戸別所得補償制度を導入すべきであると考えますが、総理のご見解を問います。
最後に、憲法改正について伺います。
総理は、所信で、憲法改正の発議に向け、国会の場においてこれまで以上に積極的な議論を期待すると述べられました。しかし、議会制民主主義を踏みにじり、財政民主主義をないがしろにし、国権の最高機関たる国会を形骸化してはばからない、つまりは、現行憲法を守るつもりもない人物が憲法改正を促すなど言語道断です。総理自身が現在の憲法をないがしろにする状態で、どのような活発な議論ができるというのでしょう。
憲法改正よりも、国葬や統一教会をめぐる問題に現在の憲法に違反する事例はないか、衆参の憲法審査会で大いに積極的に議論する必要があると考えますが、この点についての総理からの期待についてご答弁ください。
所信表明の結びで岸田総理は、信頼と共感の姿勢を大切にするとおっしゃいました。岸田総理の所信表明から、一体何を信頼し、何に共感したらいいのか、私には皆目見当が付きません。今日、第2次安倍政権以降のわが国が、有効な手だてもなく国難ともいうべき事態に直面していることには同意します。
だからこそ、国会を軽視し、何ら具体性のない表面だけの決意表明に終始するやる気のない内閣は即刻退陣いただきたい、そう申し上げて、私の代表質問といたします。