農林水産委員会で質疑

農林水産委員会で質疑に立ちました。録画をぜひご視聴ください。
★Youtube録画 https://www.youtube.com/live/JjyHkGbggKA?feature=share&t=2025
★ツイキャスアーカイブ https://twitcasting.tv/norikorock2019/movie/750614558

令和四年十一月八日(火曜日)参議院農水委員会(未定稿)

○石垣のりこ君
立憲民主・社民の石垣のりこです。およそ1年ぶりの農林水産委員会での質疑になります。どうぞよろしくお願いいたします。
まずは野村大臣に伺います。
野村大臣、所信でわが国の農林水産業が直面する課題を列挙されまして、「今まさに、国内の生産基盤を維持強化し、将来にわたって食料を安定的に供給していくためのターニングポイントを迎えている」というふうに述べられています。
日本の食料安全保障に関して、今もお話ありましたけれども、このターニングポイントに立つ農林水産大臣として、まずこれまでどのような農政であったのか、そしてこれからどのような方向に転換すべきだとお考えなのか、ご答弁お願いいたします。

○国務大臣(野村哲郎君)
お答え申し上げます。
私が、「今ターニングポイントに立っている」というふうにおっしゃっていただきましたが、私はやっぱり、この日本の情勢、高齢化が進んでいる、あるいは担い手が少なくなってきた、そういった国内情勢もあるし、あるいは、海外においてはウクライナのような生産国が今戦争でそれがストップしているというような、内外のいろんな情勢が大きく変化してきている。その中で、じゃあ、日本の農業、食料というのは今までどおりでいいのかと、金さえあれば食料品もあるいは生産資材も買えた時代から、もうそういうことがままならぬ世の中になってきたと。
一方では、日本の人口はどんどん減っておりますが、一方の海外ではもう100万人に、100億人に達しようというぐらいに人口増加があって、食料の争奪戦というのはこれはもう時期の問題だろうと、こんなふうに思っておりますので、今の日本の農業をやっぱり構造を変えていかないと、これは子や孫にひもじい思いをさせてしまうおそれがあるのではないかと。今をやはりターニングポイントと捉えて、日本の生産構造なりあるいは農業構造をやっぱり変えていく必要があるだろうと思ってターニングポイントという言葉を使わせていただいたわけであります。
したがって、そのキーワードになるのは、国内生産ができるものは国内で、できる限りそれでやって、そして国内で生産していく方向に転換するべきであると、こんなふうに思っておりまして、基本法の見直しにも、お願いを今しているところでございます。
このために、今、麦や大豆、大分自給率も低かったんですけれども、今現在、例えば、小麦でいいますと7%、私が記憶しているところでは7%がもう既に17%まで少し上がってきました。大豆にしても、今まで19%だったのがこれが25%ぐらいまでに上がってきているということで、こういう形で、小麦にしても大豆にしても、海外依存の高い品目の生産拡大をしていかなければならないだろうと、こんなふうに思いますし、一方では、一番穀物で余っているのは米だけですから、この米を使わない手はないと、こういうふうに思いますので、米粉に力を入れていこうと、こんなふうに思っておりますし、農水省の方では、麺に適した米、あるいはパンに適した米、こういうものをずっとリストアップしてありますので、このことを広げていこうじゃないかなと、こんなふうに思っておりまして、また生産資材におきましては、堆肥やそれから下水汚泥の資源なども活用しながら、できるだけ国内にあるものの利活用というのが必要だろうと、これが私の考えておりますターニングポイントだと、こう思っております。

○石垣のりこ君
ありがとうございます。
食料、おっしゃったように人間の命と健康の維持に欠かせないものでございます。構造の転換とお話しされましたけども、この農業というのは、医療、教育などと同様に、やはり公共的な性格があると。ゆえに、食料を一般の工業製品と同じように市場メカニズムに任せて資本による自由な利潤の追求を放置してしまいますと、人々が生きる権利が根本から脅かされてしまうという事態になりかねません。先進国において農業が医療、教育とともに産業的な規制の対象になっているというのは、農業のそうした側面が強いからだというふうに考えます。
大臣もおっしゃっていましたように、食料自給率、現在4割を切るまでになっておりますし、農業人口、耕作面積も減少し続けているということで、人々を飢えさせないという国の最も基本的な責務を果たしていくためには、やっぱりこれまでの農政の何が問題で現状がどうであるのかということを信頼のおけるデータを基に分析して今後の議論をしていかなければならないということを強く考えております。
その中で、今回ちょっと土づくりという点に関してこの問題を考えていきたいと思うんですけれども、喫緊の物価対策、物価高対策として肥料価格高騰対策事業がございます。資料の1枚目です。
予備費およそ787億円が充てられておりますが、条件として、化学肥料の2割削減に取り組むこととなっております。この化学肥料削減の取組のメニューの1つに、これは今回のメニューだけじゃないんですけども、至る所にやっぱり土壌診断によるこの施肥計画というのが挙げられているわけです。
土壌診断のこの意義と内容について、これ簡潔にご説明いただけますか。

○政府参考人(平形雄策君)
お答えいたします。
土壌診断は、農作物の生産基盤となる土壌に関して、通気性、排水性等の物理性と、養分の含有量、化学性といった性質を把握、分析するもので、これを実施いたしますと、例えばリン酸が過剰、あるいはカリが過剰、あるいはpH値が低いために石灰の施用が必要などの処方箋を作ることが可能となります。

○石垣のりこ君
土づくりの場合に、こういう成分の調査というのはもちろんなんですけども、そうした化学性とあと物理性、生物性という3要素があると言われております。それぞれ独立したものではなくて、関係し合って豊かな土壌がつくられるというのは皆さんもご承知のことと思います。
できれば、この3要素、総合的に見ていくべきだとは思うんですけども、今日のところはこの化学肥料の低減ということを念頭に置いて化学性の面から考えていきたいと思いますが、この土壌診断で肥料コストを削減しようとする事業というのが今回のこの肥料価格高騰対策事業以外に、そのことを主眼とした、2枚目の資料になります「肥料コスト低減体系緊急転換事業」というのが、昨年の補正予算でこの事業がつくられておりまして、これについて伺いたいと思います。
これ、今年の9月に5次募集が行われているんですけれども、この予算と実施状況をご説明いただいていいでしょうか。

○政府参考人(平形雄策君)
お答えいたします。
肥料コスト低減体系緊急転換事業、農業者の肥料コストの低減に向けて、土壌診断に対する定額の支援ですとか、堆肥等の国内資源の運搬、散布等に資する経費への2分の1の支援、これを行うものでございます。本事業につきましては、本年4月に土壌診断だけでも支援が行えるように運用を改善いたしまして、取組の加速化を進めております。
本事業、現在も実施中ではありますが、5回の公募が終了した9月末の時点では、21道府県、67か所で取り組まれておりまして、対象農業者数は約4000名というふうになっております。

○石垣のりこ君
これ、5次募集が行われているという段階で何となく分かるんですけれども、まだまだやっぱり取り組む方が少ないということになると思います。
そもそも、化学肥料の原料というのはほぼ100%輸入に依存しているということはもう周知の事実でございますので、この対策というのは今始まったことではないわけですよね。なので、肥料の価格高騰対策で令和3年度の補正予算で少なくとも組むべき予算かと言われると、これ甚だ疑問でしかございません。これ、対症療法的に取り組む課題では本来ないはずだと思います。
そもそも全国で土壌診断というのがどのくらい行われているのか、農林水産省というのは把握しているんでしょうか。また、先ほどのように土壌診断が進まない理由についてもお願いします。

○政府参考人(平形雄策君)
お答えいたします。
少し前の調査結果になりますけれども、農林水産省が2013年に約1000人の農業者に対して行った意識・意向調査では、継続的に土壌診断に取り組んでいる農業者の方、約4割、まだ土壌診断に取り組んだことがない農業者、約3割いらっしゃいました。同調査におきましては、土壌診断を継続的に行っていない理由として、1つは、一度行えばしばらく行う必要はないと考えていた、また、土壌診断結果を基に施肥改善などにつなげる指導者がいないといった点も挙げられております。
こうした課題を解決するために、当省におきましては、1つは、土壌診断により品質や収量の向上、施肥量の低減につながったという情報の発信をいたしましたり、土壌診断や施肥の改善の専門性を有する土づくりの専門家の育成の支援を行う、また、さらに、土壌診断を実施する際の費用への支援ですとか、土づくり専門家の活用への支援も行うこととしております。

○石垣のりこ君
私はこの土壌診断をもっともっと積極的に行っていただいた方がいいというふうに考えます。なぜならば、今の農業というのは、自分の慣れ親しんだ土地だけではなくて、いろいろ、農地集約であって新しい土地でやることもありますし、転作もありますし、作物の転換しながら作っていくというようなことで、気象条件も変わっていますので、すごい経験豊富な農家の方であっても、自分のその土地の土の状態がどうなっているのかということをやっぱり経験値だけではなくて客観的なデータを基に知ることができた方がやっぱりより生産力が上がるのではないかというふうに考えます。
その上で、この土壌診断の必要性について、この次のページですね、3ページ目の資料にも書かれているわけなんですけれども、今お話にもありましたように、1回やったらしばらくやらなくていいと思っていたとか、その土壌診断に対する理解及びその診断をいただいた結果を見ても、それをどのように活用していったらいいのか、それをサポートするような人材がどんどん少なくなっているということが今指摘されていたと思いますが、土壌診断の必要性がありつつ、やっぱりなかなか理解されていないというのは、これはもったいないというか、今後改善されるべき課題だと思っております。
この土づくりに関する国の施策、これは皆さんの方が私以上にお詳しいかもしれませんが、戦後、1953年に施肥改善調査事業に始まって、75年には地力実態調査というのが行われまして、1979年に土壌環境基礎調査、これはおよそ20年かけて1999年に終了していますけれども、各地、全国各地、定点調査が行われ、20年かけたデータの蓄積があったわけです。
それが、これは5ページ目の資料をご覧いただくと、これは水田の結果ではございますけれども、過去の調査結果による全国の水田土壌の可給態窒素の改善目標達成状況というような形で、全国の、これは水田ですけれども、状況が一応農林水産省として把握されているわけなんですね。
ところが、99年以降、その経過の中で、83年には土壌調査を担当してきた全国の都道府県農業試験場の土壌保全調査職員に補助してきた人件費が廃止されたという過程があり、2005年には三位一体の改革で国主体の土壌保全事業が国から地方への税源移譲になって、それ以降は都道府県の判断に委ねられてきたという、土地、土づくり大事だよと言いながら、国は自治体で責任を持ってやってくださいねと、で、その税源は移譲されているけれども、担保されていないまま、その責任においてこの土づくりというのが残念ながら進められているという現状があると思います。なので、99年以降も一応調査は行われているんですが、その手前の4枚目の資料、これは農業環境対策課の資料になりますけれども、土づくりコンソーシアムというのが設立されて、そこがまとめた資料になっておりますが、参考値として挙げられている右上の1979年から1983年の一巡目のところの資料の赤で囲んであるところですが、県数、これ33県、一部29(県)になっているところありますけれども、大体がもうこのぐらいのデータがそろっているんですけれども、ほかの都道府県の一巡目と比較した6、7、8巡目の資料を見てみると、この県数、データが集まってくる県数もばらばらで、かつ調査項目も都道府県によって違うということで、こういう非常に中途半端なデータの把握がされているわけなんですね。
これで、肥料を減らすために土づくりの調査をしてくださいと言って、お金をいろんなところにかけて、やったところでどのぐらいやっているかも把握できていない、かけたお金に対する費用対効果も分からないということでは、これ本当にもったいないなと、生産力をアップしていく、肥料を減らしていくということを考えるのであれば、こうしたデータをしっかり取っていかなければならないのではないかと、自治体任せではなくて、国が責任を持って調査に努めて広く共有すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(野村哲郎君)
お答え申し上げます。
石垣委員おっしゃるように、この土づくりというのはやっぱり農業にとっては一番基礎中の基礎でありまして、物づくりは土づくりからということで、私もたたき込まれたことがございます。隣におります藤木政務官は自分で農業をやっておられますから、そういう意味では一番実感があるんだろうと、こんなふうに思います。
ただ、今おっしゃいましたように、全国一律的に国がやるというのはいかがなものかなということを私は思います。なぜかといいますと、全国の土というのはそれぞれ土が違います。例えば、私の鹿児島はシラス土壌です。ボラ、そしてコラ、こういった土壌の質が違うところを同じような形で土壌診断して、そして一律的にやれるということにはならないんで、一番身近なところ、例えば先ほどおっしゃった県なりがやっぱりそこはきちっとした技連会というのをつくっておりますので、そういう技術者の集まりのところで、このわが郷土の土はこういう種類だからこういった肥料が不足するな、しているなということは、やはり県の方が一番これは握っているというよりも、調査しているはずでありますから、そこでやっぱり適正な肥料の施肥というのが出てくるんだろうと思っております。
ですから、何を言いたいかといいますと、やはりこの土というのはそれぞれのところで違うんで、そしてそれぞれの地域での技術屋さんの皆さん方がやっぱり調査をして、土壌診断をして、それに合うやっぱり肥料というのを施肥をしてもらうというのが最もいいことだろうと思っております。
したがいまして、今おっしゃいましたように、この土壌診断をやっているところ、やっていないところ、いろいろまだ濃淡がありますんで、われわれとしては、農水省としては、土壌診断を実施する農業者への費用の助成、あるいは土づくりに必要な堆肥等の購入、運搬、散布等の支援を更にやっていきたいと思いますし、AIを活用した簡便な土壌診断技術の開発、実証に対する支援、こういったことを今回補正予算の中で検討を今やっているところでございますので、今後とも農業者の土づくりの取組を支援をさせていただきたいと思っております。

○石垣のりこ君
地域地域によってその土の質などが違うというのは、土壌図みたいなものがあって全国いろいろ見ることができるようになっているのはもちろん存じ上げているんですけれども、それぞれの地域でそれぞれに合った対応をするというのはもちろんなんですが、そのことがどうなっているのか、現状がどうなっているのかを把握するということに関しては、これは各地域のみの責任の話ではなくて、国がどういう今後土づくりの政策を進めていくかという上で、国としてちゃんと責任を持って、こんなばらばらなデータが集まってくるような状態ではなくて、その部分の責任を担保してくださいということをお話ししておりました。ぜひともご検討いただきたいと思います。
今、質問の半分で、本当は飼料の、飼料米についても伺おうと思ったんですけれども、全く進みませんでしたので、次回に行きたいと思います。
最後に申し上げておきたいのが、前回の質疑の中でもいろいろ皆さんから出ておりましたけれども、その土づくりの上でやっぱり堆肥を使用していきましょうということが呼びかけられております。堆肥を使用する、推進していくならば、やはり畜産との連携というのは欠かせないわけですよね。しかしながら、現状、畜産農家、特に酪農家が苦境にあるということは野村大臣も重々ご存じのことと思いますけれども、宮城でもやっぱり年内に廃業を決意された方がいるというお話が届いております。どうしても輸入飼料に頼らざるを得ない大きな規模の飼育農家、まあ肥育農家も含めてですね、大きければ大きいほどよりやっぱりこの円安による物価高の影響が強く出ているということで、ぜひとも、まずは目の前の危機に対して、営農を支える支援、間もなく出されるということでしたけれども、しっかり緊急にお願いしたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。