農林水産委員会で質疑に立ちました

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令和三年五月十一日(火曜日)参議院農林水産委員会(未定稿)

○石垣のりこ君 立憲・社民会派の石垣のりこでございます。畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律案について、会派を代表して質問させていただきます。新法ということですので、一応まずは立法事実の確認からさせてもらいます。本法律案の提案理由説明には、近年の経済連携協定の締結による関税削減等により畜産物の価格の低下が見込まれるとあります。現時点での畜産物への価格の影響についてはどのように認識していらっしゃるでしょうか。野上大臣、お願いいたします。

○国務大臣(野上浩太郎君) 近年の経済連携協定の締結に伴います関税削減による畜産、国産の畜産物の影響につきまして、影響試算では、輸入価格や為替が一定である等の前提を置いた上で、関税削減に伴い輸入畜産物の価格が下落することで国産畜産物の価格も下落すると見込んでおります。一方で、直近の国産畜産物の価格は、一部の品目におきましてコロナの影響によって下落をしたものの、年度後半から回復をして堅調に推移をしており、これまでのところ、経済連携協定の締結による関税削減が国産畜産物の価格に影響を与えている状況にはないと考えておりますが、輸入畜産物の価格は、これ関税率のみならず、為替や天候あるいは国内外の需給動向など様々な要因によって左右をされますので、関税削減によって必ずしも畜産物の価格が下落するわけではありませんが、農林水産省としては引き続き畜産物の需給あるいは価格の動向について注視をしてまいりたいと考えております。

○石垣のりこ君 現状ではほぼ影響は出ていないという御認識ということですが、実際に物は入ってきているわけで、影響が出ていないというよりかは、影響が出ないように様々な支援策等を講じて数字上で影響が出ていないということが一応確認できるということであると思います。実際にアメリカ産の牛肉、セーフガードが発令されるということで、非常に厳しい状況、二〇三三年には九%まで下がるということで、価格の下落が見込まれるという想定の下で動いていらっしゃるということです。法案提出理由としては、この法律を作ることに

よって畜舎建築のコストを抑えることができるということが示されているんですけれども、この本法案によって建築基準法の適用除外で最も建築コストを削減できるであろうB基準というのが設定されていますが、このB基準で畜舎を建築した場合、現行と比べてどのぐらい削減が図られるんでしょうか。モデル畜舎での試算などありましたら、具体的な数字を示していただければと思います。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。御指摘の建築コストの削減でございます。これにつきましては、既に建築基準法の基準で建築済みの畜舎につきまして、この新法に基づく基準で設計し直すことにより試算をいたしたところでございます。御指摘のB基準で建築をした場合でございますけれども、その試算の結果、部材の強度を見直すことによりまして、柱、鉄骨、生コンクリートなど畜舎の構造に係る部材につきましては、その使用量について、鉄骨については、鉄骨畜舎の場合は約一割、木造畜舎の場合は約三割が削減できる事例が見られたところでございます。これによりまして、畜舎の構造に係る部材の費用は鉄骨で約一割、木造で約三割まで削減できる可能性があると考えております。また、畜舎の工事費全体で見ますと、その構造に係る部材の費用は削減可能になりますけれども、畜舎の建築工事費全体には、構造に係る部材以外の部材、例えば屋根ですとか壁ですとかそういったものの費用ですとか、さらには工事に係る人件費など、この構造基準の見直しで削減することが難しい費用が含まれておりまして、これらを含めました建築工事費全体で見ますと、このB基準によりまして、鉄骨畜舎では一ないし二%が削減可能、木造畜舎では三ないし六%が削減可能と考えているところでございます。また、基礎につきまして、凍結深度より深く根

入れしなくてもよいという形で見直すことによりまして、工事費全体の一ないし三%の削減となった事例が見られたところでございます。これらを合わせまして、合計でございますけれども、鉄骨畜舎につきましては建築工事費全体の二%から五%の削減、木造畜舎につきましては工事費全体の四%から九%の削減が見込まれるという試算になってございます。このため、例えばこのモデルでございますけれども、建築工事費全体が一億三千万円の面積一千八百平米、平方メートルの木造畜舎におきましてこの建築工事費を最大九%削減ということになりますと、約一千二百万円の削減ということになるところでございます。

○石垣のりこ君 具体的な数字をありがとうございます。畜舎の建築基準が緩和といいますか、建築基準法の適用除外になって少し建築費が抑えられるという話を畜産農家の方にしますと、具体的に幾らぐらいになるのかということで、やっぱりすぐにコストについての御質問がありましたので、具体的な目安を示していただけるのは非常に分かりやすいと思うんですが。当初、でも、説明、理由説明を伺っていると、もう少し幅としては削減率があるのかなと私は印象として持っていたんですが、実際のところ、鉄骨だと二%から五%、木造でも

四%から九%ということで、消費税分ぐらいかなというような、そういう数字を今出していただきました。思いのほか、それほどやっぱり削減できるところがないのかなと。これ、これまで建築基準法に基づき行う畜舎等の建築等に係る負担が畜産業の経営実態から見て大きくなっているということで提案理由に示されていますけれども、実際のところ、この畜舎のコストというのは生産コストのうちどのくらいを占めているんでしょうか。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。畜舎の生産コストが、あっ、建築コストが生産コストに占める割合ということでございます。これ、生産費調査がございます。その中で、生産コストに占める畜舎の建築コストの割合について、令和元年の畜産物生産費統計の調査でございますけれども、例えば酪農におきましては、生乳百キロ当たりの生産費の全国平均値でございますが、生産費の合計、いわゆる費用合計が一万八百四十七円であったのに対しまして、建物費は二百四十八円ということになっております。これを計算いたしますと、生乳の生産コストに占める建築コストといたしましては約二・三%ということになるところでございます。

○石垣のりこ君 これ、畜種によっても随分違うんですけれども、お渡ししている二枚目の三番の資料を御覧いただきたいと思いますが、令和元年畜種別生産費の主要項目の構成割合です。これを見ていただくと、これ、まとめに掲載されている円グラフなんですけれども、この生産コストの内訳見ていただくと、この建物費というのがそもそもカウントされているのが、統計の数字としては建物費というのはあるんですが、出されているのがこの二つしかないんですね。そのほかのところに全部収められている、ごく僅かな数字なわけです。三枚目の方に具体的に酪農、畜産における生産費に占める建物費の割合が数字として示されてい

まして、どのぐらいの割合を示しているかというと、先ほど御説明にもありました一例を含め相当低い建物費であるということです。この費用をもって国際競争力の強化に資するというのを、どこまで説得力を持った数字として言えるのかということは非常に疑問です。これ、じゃ、ここを見て、これ生産コストを下げましょう、そのために、それによって国際競争力を上げていきましょうというときに、何を下げたらいいかというのを御覧いただければ、一番掛かっているのは、素畜費掛かっているところも結構ありますけど、やはり飼料費ということになると思います。これ、生産コスト削減を掲げるのであれば、やはり飼料費を下げないことには余り意味もないと思うんですが、御見解はいかがでしょうか、野上大臣。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。今申し上げました生産費調査の建物費でございますが、この中で建築費といいますのは、先ほど申し上げました工事費用ですね、これをその耐用年数で割ったものでございまして、木造では十七年、それから軽量鉄骨では二十五年という長い期間使用するものでございますので、それで割りまして計算をいたしまして、その一年当たりを出し、また一棟当たりを出しているところでございますので、そういう意味では全体に占める割合というのは大きくはございませんが、実際に畜舎を建築する場合には多額の工事費が一度に掛かるということでございます。先ほど申し上げました、例えば面積千八百平米の木造畜舎で一億三千万円と掛かった事例がございますので、最大九%の削減でありましても一千二百万円の削減となり、この畜産経営にとって効果は大きいと考えているところでございます。それから、議員おっしゃる、御指摘のとおり、コスト削減のためには飼料費を下げるというのは非常に大きな効果があるというふうに考えておりまして、そちらの方はそちらの方でしっかりと対応してまいりたいと考えております。先ほどございましたように、畜産、酪農におきまして生産コストに飼料費が占める割合は高い割合になっているところでございまして、特に今、輸入飼料が高値で推移をしているということもございます。こういった状況も踏まえまして、輸入飼料に過度に依存している状況から脱却をして、国内の飼料生産基盤に立脚した足腰の強い生産に転換して飼料費の削減を図ることは極めて重要なことというふうに考えているところでございます。国産飼料の増産に向けましては、草地基盤の整備によります草地の生産性向上ですとか、飼料用種子の安定供給ですとか、あとはコントラクターですね、こういったものによりまして飼料生産組織の作業の効率化を図って運営強化を図る。それから、放牧とか、こういったものも推進をしてまいりたいと。こういった取組を推進するとともに、それから、配合飼料の製造費それから輸送費、こういったものの低減につきましても、農業競争力強化支援法に基づきまして、配合飼料メーカーの工場とか飼料の卸売・小売業の再編合理化、こういったものも進めているところでございます。農林水産省としては、こうした取組を総合的に展開をいたしまして飼料費の低減を図る取組、これをしっかりと進めてまいりたいと考えております。

○石垣のりこ君 いろいろ御説明ありがとうございます。飼料を増産していって飼料自給率を上げていくという、そういう方向にあることは分かりますが、目標として掲げられているのは、現在の自給率二五%に対して三四%まで上げていくという非常に目標としては厳しものであると思いますので、なかなかこれが現実的なものではないのではないだろうか、もともっと力を入れていかなくてはいけないのではないかと思います。畜舎の建築に関しては、平成十年以来、これ資料の一枚目にありますけれども、建築基準法の下で緩和措置が度々ととられております。これまでの規制緩和でどのぐらい実際のところ畜舎建築のコスト削減が図られてきたという、これまでの評価はどうなっていますか。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。畜舎の建築基準でございますが、委員お尋ねのとおり、これまで建築基準法の下で緩和措置講じられてきております。平成九年の三月に、当時の建設大臣の認定を受けました畜舎設計基準によりまして、一般の建築物より建築基準が緩和されると、こういったことなど、この建築基準法の下での緩和措置でございます。これまでのこういった緩和によりまして、例えば、北海道におきまして、積雪荷重の緩和によりまして部材の使用量が二割から三割程度削減可能になっております。それから、南九州におきまして、風荷重の緩和ですね、風です、これの緩和によりまして部材の量が、部材の使用量が一割から二割程度削減可能となっているところでございまして、こういったことから一定のコスト削減効果があると、出ておるところでございまして、これまでこの畜舎の建設において活用されてきたと認識しております。

○石垣のりこ君 これまでも建築基準法の緩和によって畜舎は建築コストをできるだけ抑えるようにはしてきたけれども、現状はこのとおりであると。今回、これまでのような建築基準法の緩和措置ではなくて、建築基準法の特例として新たに技術基準と利用基準を設けて新しい法律を作るという立て付けになっておりますけれども、そのような仕組みというか形を作ることにしたのは、取ることにしたのはどうしてでしょうか。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。先ほど申し上げましたように、これまでは建築基準法の下で畜舎の特性を踏まえて告示改正などにより緩和をしてきたことでございますが、そういったやり方で実現することが可能な範囲でやってきたということでございますが、今回、さらに、近年建築コストが増加をしているという中で畜産農家などから更なる基準緩和を求める声がありました。それから、やはり昨今の国際経済環境の変化などに対応するため国際競争力の強化という観点からの必要性と、基準緩和の必要性というものが高まってきているということを踏まえまして、その建築基準法の基準を更に緩和することを可能とするため、緩和をすることを希望する畜産農家の方がその構造等の技術基準に加えまして一定の利用基準を遵守する計画を作成いたしまして、その計画を都道府県知事が認定することで、この二つの基準が相まって安全性を確保するという新たな仕組みをつくることといたしました。このような仕組みにつきまして、建築基準法はそもそも利用基準というような考え方は取っていないということ、また、建築基準法は、建築物について、その建築主の希望にかかわらず、一定の構造等の基準を適用すると、こういう制度でございますので、こういった建築基準法の体系の下で今回の措置を講ずるということは困難であることから、建築基準法とは別に法律を作ることとしたというものでございます。

○石垣のりこ君 建築基準法における技術基準の緩和では対応できない、すなわち建築基準法の第一条にあります生命と財産を守るという最低基準というのがございます。これはあくまで技術基準として新しい法案は満たせないということになると思います。その目減り分を利用基準、ソフト基準で補うという立て付けにしたということだと思います。そこで、建築基準法所管省庁であります国土交通省に伺いたいと思いますけれども、本法案を特例として適用除外を認めたというのはどのような理由からでしょうか。

○政府参考人(黒田昌義君) お答えいたします。農林水産省さんから御説明がございましたとおり、畜産業の国際競争力の強化を含めまして、畜産業を成長産業化していくためには更なる建築コストの引下げということが求められていると認識をしております。このため、一昨年、令和元年の六月におきます規制改革推進会議におきまして、農林水産省におきまして新たな畜舎建築基準等のあり方に関する検討委員会が立ち上げられまして、私どもとしても御協力をさせていただきながら、その検討を踏まえまして、令和二年の七月に閣議決定されました規制改革実施計画におきまして、農林水産省は、国土交通省と連携して、市街地から離れて建設される畜産業に要する、用に供する畜舎等を建築基準法の適用の対象から除外する特別法について、所要の法律案を整備することとされたところでございます。こうした背景の下で、新制度の対象となる畜舎につきましては、省力化機械の導入等による人の滞在時間を制限すること、平家建てとし居住のための居室等を設けないこと、市街化区域及び用途地域以外への立地を条件として、都市部での立地を認めないことといった利用基準を法令上追加的に要求し、それを都道府県知事が認定することを前提に、建築基準法が求める地震に対する構造安全上、構造安全性を更に緩和した技術基準を適用したとしても総合的な畜舎の安全性が確保されるということとしていると理解しております。このように、畜産業の国際競争力の強化を図る法目的を実現するため、畜舎に限定した仕組みを全ての建築物を対象とした建築基準法で措置することはできないということでございますので、建築基準法とは別に法律を作り、認定を受けた畜舎については建築基準法を適用除外とする仕組みとしたということでございます。以上でございます。

○石垣のりこ君 その提案理由の背景として国際競争力の強化というのが掲げられておりまして、もちろんそういう背景があることは事実だとは思いますけれども、やっぱり建築の世界における憲法とも言える建築基準法を適用除外にする、その担保として、安全性の担保として利用基準を定めるというところで、国土交通省としては、一応その憲法の適用除外というのはこれちょっと大きな問題というかハードルを越えることになると思います。そのことの理由として、畜舎という利用の目的の特性上、建築基準法の適用除外、新しい基準を認めるということであれば分かるんですが、コストを削減するため、競争力を強化するためという、経済効率優先ということが第一義的に掲げられることに対して、私はそれで本当にいいのだろうかという疑問を持っております。そういう意味で、改めてその点の問題を指摘させていただきたいと思うんですけれども、建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低限の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的とした法律だと認識しております。そのように目的にも書かれております。本法案の設定する技術基準では建築基準法におけるその目的を担保できないという認識でよろしいでしょうか。あくまで技術基準における評価です。

○政府参考人(黒田昌義君) お答えいたします。新基準の、新制度の技術基準につきましては、地震に対する畜舎の構造安全性につきまして、建築基準法が求める技術基準と比較すると緩和する方向という内容であるというふうに理解をしております。ただ、農林水産省さんから答弁がございましたとおり、今回の新制度の対象となる畜舎につきましては、人命確保に配慮した利用基準を法令上追加的に要求をいたしまして、それを知事が認定することを前提といたしまして、基準法が定めます、求めます地震に対する構造安全性というのを更に緩和した技術基準を適用したとしても、総合的な畜舎の安全性が確保されるというふうに理解しているところでございます。以上でございます。

○石垣のりこ君 利用基準というのは、もちろんその定めること自体の必要性というのはあると思うんですけれども、どこまで守られるか一定分からないという非常に曖昧なところもありますし、自己責任の部分が大きくなると思います。そういうところで、やはり建物自体の技術基準の安全性を一定確保しておく必要性というのが確実にあるということで、それは、いわゆる人が居住する住居、公共施設等までの堅牢さは要らないけれども、だからこそ、畜舎だから建築基準の適用外を認めるという、畜舎だからという理由であれば合理的な理由として理解できるんですが、やはり、競争力の強化、コストが削減されるからといって安全性と経済性をてんびんに掛けるような法律の提案というのは、これは非常に筋が悪いと私は思います。今までのこの話の中で、本法案の基準で浮く経費は試算では建築費の大体四%から九%、五%から九%であるということ、生産費のうち最も多くを占めるのは圧倒的に飼料費で、あとは素畜費、人件費というのは多くて三割程度と、建物費は生産費の項目として、これは耐用年数で割るということもありますけれども、主なものとしてはカウントされていないということ、本法案の技術基準は現行の建築基準法で可能な限り緩和してきた基準も満たさない技術基準であるということということが明らかになったわけなんですけれども、野上大臣、本法案、立法事実としての根拠に乏しい、あるいは適切ではないと思いませんか。御見解お願いします。

○国務大臣(野上浩太郎君) 畜産業においては、国内外の需要に応える供給を実現をしていかなきゃならない、また増頭、増産を進めて生産基盤強化に取り組む必要があります。特に酪農におきましては長時間労働が課題となっておりますので、省力化機械の導入によりましてこれを改善する必要があります。そういう中で、畜産業においてはこの畜舎等は必須の施設でありまして、増頭したり搾乳ロボット等の省力化機械を導入したりする場合には畜舎を新築又は増築、改築する必要がありますが、やはり近年、建築資材や工賃単価が高騰しておりまして、畜舎等の建築費用が増加していることから、先ほども話がありましたが、建築基準の緩和をしてほしいという要望が農家からも上がっている状況であります。このような状況を踏まえて今般この法律案を提出したわけでありますが、この法律案によりまして、農家の皆様にとっては緩和された基準となるため、畜舎の建築コストが削減ができる。先ほど、

鉄筋で二から五%、木造で四から九%という話がありましたが、それに加えまして、構造等の技術基準の審査が不要となる面積の大幅な引下げが可能となりますので、審査に掛かるコストを削減できることに加えまして、建築確認等々、その手続期間が短くなることで、その分早く畜舎等が利用可能になる等のメリットが考えられると思います。また、建築コスト等の削減に伴ってほかに使えることになった資金を活用しまして、省力化の機械を導入するなどによって労働時間を削減をして、経営コストの削減を図ることも可能となると考えております。この新制度を活用いただくことで、所得の向上や労働負担の軽減が図られることになることを期待しているわけであります。

○石垣のりこ君 生産費に占める割合として表に出てこない数字であっても、実際、皆さんからもお話ありましたように、建て替えに必要ということで、まとまった金額が負担になるということは事実であると思います。なので、畜産農家の方の負担が実際に建築費用として大きいものであることは否定できません。そういう意味でも、畜舎等を住居と同等の堅牢な基準で造らなくてもよい、緩和できる基準はもう少し緩めるという法案の内容自体に反対するものではないんですが、本法案の提案理由としては、国際競争力強化のためという大義ではなくて、あくまで畜舎における建築基準の在り方として、畜舎という特性上、必ずしも建築基準法の技術基準を適用しなくてもよいという合理的な理由であることが本来の提案理由としてあるべきだと考えます。増頭、省力化機械の導入といった大規模化を前提とするような経済効率優先の立法目的ではなくて、あくまで畜舎であるから技術基準のランクを下げるのであって、その結果、中小家族経営の畜産農家であれ、営農を続ける上で負担の大きい畜舎の建築に掛かる費用が軽減されるというメリットがあるのであって、今後関税がどんどん削減されることは決まっておりまして、価格競争にさらされることは避け難い畜産農家にとって国際競争力強化にもつながるということではないのでしょうか。この法案の立案過程には、御多分に漏れずといいますか、先ほど藤木委員からもお話がありましたように、規制改革推進会議での議案があり、それを受けてのワーキンググループでの話合いがあり、また検討委員会での意見聴取があります。今回の畜舎の規制緩和自体は悪いとは思いませんが、現行の建築基準法にのっとった建築も選択できるという仕組みもありますので、その点は非常に考えられているなというふうには理解しております。しかしながら、何度も申し上げるように、命と財産を守る最低の基準という原理原則から経済効率を理由に技術基準を逸脱してもよいという前例をつくることに対しては、非常に異を唱えたいと思います。安易な経済至上主義にくみしないでいただきたい、法律の提案理由であっていただきたかったなというのが私の意見です。そのように指摘した上で、法案の具体的な内容について時間が許す限り質問をしていきたいと思います。B基準について主に伺ってきましたけど、A基準、これは建築基準法の同等の技術基準とあるんですが、これ全く同じではないんでしょうか。変えるとすればどのような基準を変えるか、教えてください。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。A基準でございますけれども、A基準は、利用基準といたしましては、畜舎内で宿泊しないといった簡易な利用基準と、それから技術基準につきましては、建築基準法の基準に準じた技術基準、この組合せで考えているところでございます。技術基準について、A基準の技術基準について現行の建築基準法と異なる点ということでございますが、先ほど申し上げました中で、A基準でありましても、基礎の凍結深度の問題につきましては、これはA基準でございましても、平家の畜舎等であれば仮に多少の傾きが生じても畜産経営の活動には支障が生じないと考えることから、この凍結深度の規定についてはA基準においても規定しないということ、まあ規制しないということを検討しております。この点が現行の建築基準法とは異なるところでございます。それから、畜舎等に使用する部材についてでございますが、建築基準法上は、主要な部材についてはJIS規格などに適合したものか、あとは国交大臣の認定を受けたもの、これに限定されているということでございますけれども、新制度におきましては、JIS規格でない部材等であって海外とかの規格で使用されているというものにつきましては、基本的に使用を認める方向で検討していきたいと考えておりまして、この点、この二点が異なるところでございます。

○石垣のりこ君 凍結深度ということで、またA基準、B基準、それぞれ省令で定められるとは思うんですけれども、建築基準法の、現行のですね、新耐震基準でも、震度五強程度の数十年に一度の頻度で発生する地震、あるいは震度六強から七に相当する数百年に一度程度の極めてまれに発生する地震という想定で定められているわけです。しかし、近年、この想定をはるかに超える頻度で震度五強クラスの地震起きております。私の地元宮城などは、ここ最近、二月には最大震度六強、三月、五月と震度五クラスの地震が起きています。数十年、数百年に一度どころか、もう数か月に一度、頻発しているということになります。こうい

う点も加味して、本当に安全な基準であるかということはしっかり精査していただきたいと思います。本法案、アニマルウエルフェアの観点からというのは検討されていらっしゃるんでしょうか。例えば、技術基準の緩和による動物の安全性の確保についての検討、利用基準の遵守による動物へのケア、観察時間の減少などにつながる可能性についてはどのように考えていらっしゃいますか。

○副大臣(宮内秀樹君) お答えをいたします。本法律案は、建築基準法の特例としての構造等の技術基準を緩和するものでありまして、利用基準と技術基準の組合せにより畜舎等としての安全性を確保するものであります。一方で、良好なアニマルウエルフェアは、畜舎そのものではなくて、畜舎内に設置される家畜を収容する設備、いわゆるケージ等や日頃の飼育管理により実現されるものでありまして、また、利用基準及び技術基準は畜舎等の安全確保を目的としたものであることから、アニマルウエルフェアの実現に直接関係するものではないというふうに考えております。技術基準の緩和につきましては、新制度のB基準は建築基準法の基準よりも緩和された基準に基づく建築等を可能とするものですが、例えばまれに起きるような地震、震度五強程度で畜舎が損傷はしても倒壊はしない強度にまで構造等の基準を緩和することを考えておりまして、家畜の生命を軽んじているというものではないというふうに考えております。また、本法律案では、利用基準の一つといたしまして滞在者数及び滞在時間の制限を設けることとしておりますけれども、当然のことながら、この制限によって適切な飼養管理が行えない事態が発生するようなことがないように制度設計をすることが重要であるというふうに考えております。そのために、昨年、当省が実施しました畜舎に滞

在する人数及び時間についての調査の結果も踏まえまして、安全性の確保を可能としながら適切な飼養管理を行えるように、今後具体的な基準を専門家や畜産農家の意見を踏まえて検討してまいりたいというふうに考えております。なお、滞在時間制限を達成するため省力化機械が導入されれば、搾乳や給餌といった作業の省力化につながることで生じた時間を利用いたしまして、アニマルウエルフェアへの配慮を含めた家畜の飼育管理の充実を図ることができるというふうに考えております。

○石垣のりこ君 作業をする人には何時間以内ということは言えますけれども、動物はここから何時間以内に出ていけというわけにはいかないので、ずっとそこにいるのが動物でございますので、しっかりとこれも検討していただきたいなというふうに思います。地震、台風により本法案が適用された基準で建築された畜舎等に被害が生じた場合、これまでの基準で建築された畜舎等と受けられる支援に違いが生じるということはあるでしょうか。 

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。畜舎などが激甚災害などによって被害を受けまして国の支援が必要と判断された場合、これまで強い農業・担い手づくり総合支援交付金やALIC事業でございます畜産経営災害総合対策緊急支援事業などによりまして被災した畜舎等の復旧を支援してきたところでございます。新制度に基づき建築される畜舎につきましても、これまでの制度に基づき建築された畜舎への支援と同様の取扱いとなるものと考えているところでございます。

○石垣のりこ君 同様ということで、決して新い基準で建てた方が不利益を被るようなことがないようにしていただきたいと思います。また、建築基準法の適用外となるということで、この本法案によって建築された畜舎等、従来の火災保険、地震保険、具体的にどのぐらい入っていらっしゃるかはちょっと分かりませんけれども、この対象となり得るのか、その点、保険会社への説明など踏まえて、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。保険でございますけれども、これは一般的には、保険の対象となるものが持っております価値とそれからリスクの発生度合いに応じまして一定の保険料が設定されることで保険として成立するものでございます。新制度の畜舎につきましても、保険会社におきまして従来の保険の対象とするなど、何らかの形で保険の対象になるというふうに、なるものと考えておるところでございます。農林水産省といたしましては、この保険会社の円滑な対応に資するという観点から、今後具体的な技術基準が固まり次第、建築基準法よりも緩和された構造等の基準によるこの新制度の畜舎等でありましても通常の地震には十分耐え得る、そういったものであるということにつきまして保険会社に丁寧に説明を行ってまいりたいと考えているところでございます。

○石垣のりこ君 これからということでよろしいでしょうか。実際、適用除外ということでしっかりと説明をしていただいて、かえって保険料が高くなって余り意味がなかったというようなことにならないようにしていただきたいと思いますけれども、やはり建築基準法という大前提から外れるということは一つすごく大きなことであるというふうにしっかりとその辺は認識していただきたいなと思います。来年の春から施行するというのにこれからということで、制度設計上大丈夫なんだろうかとちょっと若干不安な御説明ではありましたけれども、消防法、建築基準における衛生基準に関してはこれまでの基準と異なる点はありますか。

○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。この法律案でございますけれども、この法律案は建築基準法の特例を設けるものでございまして、消防法についてこの法律で特例を設けているわけではございません。消防法に基づく基準はこれまでどおり適用されるということになるわけでございます。ただ、この法律案とは別に、消防法第十七条の規定において消火栓などの消防用設備の設置基準が定められておるわけでございますけれども、これについては、この規定は消防法の施行令第三十二条の規定に基づいて消防本部等への、地元の消防本部等への申請により緩和できることとされておりまして、実際に九六%の、調査しましたところ、九六%の畜舎においてこの設置義務の緩和が行われているという実情にございます。こういった実情にあることを踏まえまして、消防庁におかれてこの畜舎等について消防用設備の設置基準を見直す、緩和する方向で検討を進められているというふうに承知をしているところでございます。それから、建築基準法におきます衛生基準についてでございますが、畜舎等に係る基準といたしまして、例えば敷地やトイレの衛生に関する基準が定められているところでございますが、こういった基準につきましては、この敷地、トイレ等の衛生につきましては、本法律案に基づいて建築等される畜舎などにおきましても引き続き確保されるべきものであると考えております。また、衛生の基準について、畜舎等の利用方法により補完できるというものでもないと考えておりますので、衛生等に関する基準についてこの法律案で緩和することは考えていないところでございます。

○石垣のりこ君 消防法に関してもそうですし、建築基準における衛生基準に関しても、やっぱりいろんなことがチェックしていくシステムとして、例えば五年に一度というような目安なども示されていますけれども、本当に利用基準がちゃんと守られていくのかというのは甚だ疑問なところもありますので、この点、技術基準を緩和するのであれば、しっかりその部分、利用基準で担保できるような仕組みというのをつくっていただきたいなと思います。時間になりました。建築基準法の目的であります命と財産を守るための最低限の基準の適用を除外とする法律を起案する理由が国際競争力の強化であることについての問題というのを改めて指摘させていただきます。さらに、畜舎の建築費の削減が国際競争力の強化に寄与するということが具体的数字としては実は説明、説得力に乏しいという、その点も指摘せざるを得ません。しかし、畜舎という特性から、技術基準を緩和すること自体には一定の合理性があると考えますので、変更される基準が、建て主はもちろん、新基準で設計する建築士の方、施工業者の方、またもろもろの手続をチェックする自治体、委託業者の方、建築基準が変わることによって、先ほど保険の話もありましたけれども、この適用除外、関係各所ですね、影響を及ぼす関係各所に対しての丁寧な説明、時間も結構限られますし、あとは責

任の所在を明らかにしていただきたいと思います。建築基準法の適用除外となったことによって身の安全が脅かされたり、畜産農家などが不利益を被るというような本末転倒なことがないように強くお願い申し上げて、質問を終わります。