参議院 農林水産委員会

参議院 農林水産委員会で質問に立ちました。録画をぜひご視聴ください。
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令和五年三月十七日(木曜日)
参議院農林水産委員会(未定稿)

○石垣のりこ君
立憲民主・社民の石垣のりこです。
日本政策金融公庫が今週の14日、担い手農業者を対象にした農業業況調査の結果を公表しました。前年と比べた農業経営の良しあしを示す景況DIが2022年でマイナス39.1と、1996年の調査開始以来最低を記録したということです。その中でも酪農はマイナス80以下。畜産、酪農は全ての畜種で過去最低を記録しまして、生産資材の高騰などによる経営難が浮き彫りになったということなんですね。こうした状況は、食料安全保障にも影響する深刻な事態だと受け止めております。さて、今日の予算に関してもそうですし、先日の野村大臣の所信でも食料安全保障というのが政策の柱の一つとされております。この食料安全保障の考え方について、まずは伺いたいと思います。先日、3月14日の衆議院農水委員会で、小山議員から、食料・農業・農村基本法における食料安全保障という概念を定義する必要性について質問がありました。それに対し野村大臣は、基本法の第19条における不測時における食料の安全保障に関する条文規定を挙げて、現在行われている基本法検証部会において、従来の基本法では不測の要因でありましたが、これは平時からもその達成を図るべきだという、大変両面からの御指摘をいただいておるところでありますというふうに答弁されています。そこで伺いたいんですが、食料安全保障、確かに言葉としては基本法の19条のみに記されているわけなんですけれども、不測時における食料安全保障ということにもう限定されているのか。その概念としては、既に基本法2条の、第2条の食料の安定供給も含んだものとして捉えられて食料安全保障に関する政策が立案され、実行されていると諸々の対策などを見ても私は判断するところなんですけれども、その辺のご見解、いかがでしょうか。

○国務大臣(野村哲郎君)
今ご指摘のとおり、先般の衆議院の委員会におきまして、農林水産委員会で小山委員の方から今おっしゃったようなご質問がございました。私がお答えしましたのは、現行法では第19条において不測時における食料安全保障に関する条文が規定されておりますが、先日の小山委員への答弁では、この現行基本法における整理についてご答弁を申し上げたところでございます。現在、基本法の検証、見直しを審議いたしておりますが、基本法検証部会においては、食料安全保障を国民一人一人が活動かつ健康的な活動を行うために十分な食料を将来にわたり入手可能な状態と定義しまして、平素からのその達成を図るべきではないかなどといった今議論が行われているところでございます。私どもも、この基本法の検証部会の議論は引き続き行われておりますが、こうした部会での議論も踏まえながら、基本法の見直し作業を進めてまいりたいと思っております。

○石垣のりこ君
農水省のホームページ見ますと、資料の①ございます、食料安全保障とはというところに第2条と第19条、両方掲げられていて、その不測の事態ということだけではない、もうちょっとトータルな観念で平時と緊急時も含めて捉えられているというところで、非常にその概念、使い方が曖昧になっているのではないかということで、基本法の見直しの際にここの整理が必要だというふうに私も思っておりますし、今大臣からもご答弁ありましたので、その辺のご検討をお願いしたいと思います。その食料安全保障を考える上で、大臣所信では、食料安全保障という言葉というのは複数回出てくるんですけれども、「食料自給率」という言葉が、残念ながらというか、一回も出てきておりません。この食料安全保障と食料自給率との関係というのをどのように捉えていらっしゃいますか。

○国務大臣(野村哲郎君)
先日の所信表明におきましても、食料安全保障のリスクの高まりの中で、将来にわたって国民に食料を安定的に供給していけるようにするためには、安定的な輸入と適切な備蓄が必要だと、こういうことを、組合せだということを申し上げました。国内で生産できるものはできる限り国内で生産していく必要があると述べましたとおり、食料安全保障の確保のためには食料自給率は重要だと、このことはもうはっきり申し上げられると思います。今、日本にあるものを使って日本で生産していくという基本的な考えのもと、輸入する食料や生産資材への過度な依存を低減していく構造転換に向けて、小麦や大豆、飼料作目などの海外依存の高い品目の生産拡大や米粉の利用拡大、加工・業務用野菜の生産拡大、あるいは畑地化の推進などを着実に実施していくこととしているところでございます。

○石垣のりこ君
今お話にありましたように、国内で生産できるものはできる限り国産で、国内で生産していくというようなことはもちろん触れられてはいるんですけれども、やはり、この例えば緊急事態食料安全保障指針というのがございますが、その中においても、その策定の趣旨について、まずはじめにわが国の食料需給の状況というのが示されておりまして、食料自給率が年々低下し、供給熱量ベースでは今や主要先進国で最も低い水準となっているという認識が示されていると。方向性としては、もちろん自給率が、上げていくということはあるんだとは思うんですが、その「自給率」という言葉が一切出てこない。そうすることによって、やっぱり大きな数字として定量的な目標を示すということはその予算の効果を図る上でも非常に重要なことだと思いますので、この点、なぜ外されたのかなというところで、今ちょっとご答弁の中からは明確なご意図が分からなかったんですけれども、やはり定量的な評価というのはどこの基準で考えるのかということは非常に重要なポイントではないかと思います。その上で、緊急時の食料安全保障のためには平素からの取組も必要であるということが緊急事態食料安全保障指針でも述べられております。この指針においては食料自給力の維持向上ということが書かれておりまして、資料の②にこちらの指針の概要が示されております。「食料自給力」、これは皆様もご存じのとおり2015年のときから導入された指針でございますけれども、食料自給力についてちょっと簡潔にご説明をいただくことはできますでしょうか。

○政府参考人(杉中淳君)
お答えいたします。食料自給力指標でございますけれども、わが国の農林水産業が有する農地、農業者等の潜在的な生産能力を最大限に活用した場合、どれだけの食料を供給できるかというものを示すものであり、わが国の食料安全保障上の状況を示す重要な指標だというふうに考えております。

○石垣のりこ君
農地等の農業資源、農業技術、農業労働力に着目して試算されるということで、一つの指標ではあると思うんですけれども、問題は、これも皆様ご承知かもしれませんが、花など非食用作物を栽培している農地や再生利用可能な荒廃農地に米や小麦あるいは芋類などの高カロリーの作物を植えたときにどれだけの供給熱量がはじき出せるかという指標になっておりまして、生産転換に要する期間は配慮されていないほか、肥料、農薬、化石燃料、種子等は国内生産に十分な量が確保されているという仮定のもとにこの指標が作られているということだと思います。今、令和3年時点で、食料自給率指標、芋の中心の作付けで最大2418カロリー、一人一日当たり必要な推定エネルギー量が2169カロリーと設定されておりますので、既にこの今の時点で上回っているという数字が出ているわけなんですけれども、よくよく考えていただければ、もう現時点、緊急事態とまでは至らない現時点においても、これだけ生産資材が高騰して、冒頭で申し上げたように、農業経営の危機に陥っているわけです。これ、十分に確保されているという仮定のもとに示される数値がどれだけやっぱり現実的に有効であるのかということに関してやっぱり疑問を抱かざるを得ないんですけれども、その点についてご答弁いただけますでしょうか。

○政府参考人(杉中淳君)
委員ご指摘のとおり、食料自給力指標につきましては、農地、農業者以外の生産要素については十分な量が確保されているということを前提に置いて試算をしております。例えば、肥料につきましても、海外依存度を試算の際に考慮をしておりません。肥料等の生産自体は農業生産に不可欠なものでございまして、今般、食料安全保障リスクの中で生産資材の安定供給等の重要性というものをわれわれも痛感をしているところでございます。現在、わが国の食料安全保障の状況を適切に把握、分析するというもののやり方についても基本法の中で議論をしておりますけれども、食料自給力指標だけではなくて、世界的な食料情勢や国内の農業の実態を示す指標など、わが国の食料供給に関するさまざまな指標を活用、分析するという方向で総合的な検討を行っていきたいというふうに考えております。

○石垣のりこ君
この食料自給力指標というのは、緊急時の指標としては、これは使われるものなんでしょうか。

○政府参考人(杉中淳君)
緊急時も含めまして、最大限どれぐらい生産をする能力があるかということにつきましては非常に有効な指標と考えておりますけれども、緊急時、不測時につきましての対応等についても基本法検証部会についても更なる検討が必要というご指摘もいただいておりますので、そういったときの生産能力の可能性を示すものというものについても併せて今後必要な検討を行ってまいりたいというふうに考えています。

○石垣のりこ君
今のは、それは今使って考えていいということなんですか。それとも、使って考えているけれども問題があるんだということなのか、使うことに対して問題があるので今使わないでいるということのどちらなんでしょうか。

○政府参考人(杉中淳君)
今後、食料自給力指標のあり方も含めて検討していきたいというふうに考えております。食料自給力指標につきましても、カロリーベースでの上限というものを示すものではありますけれども、ただ一方、いろんな食生活を支える上でほかに考慮すべき要素というのはたくさんございますので、現在そのへん、あたりも含めまして、今後引き続き議論していくということで、今後の適用の方法も含めて検討していきたいというふうに考えております。

○石垣のりこ君
やはり普通に考えて受け止めたときに、最大限どこまで私たちがエネルギー供給がある、供給力があるのかということを考えると、やっぱり非常時ということを考えざるを得ないというふうに思います。実際、昨年の4月の日経新聞に、「食料安保、最後は芋頼み、不測の事態に乏しい備え」というような見出しで記事になっているわけです。かつ、令和2年3月5日の農林水産委員会、これ参議院の農林水産委員会で当時の江藤大臣が、この食料自給力に関して、食料自給率の37(%)という低さをごまかそうというような意図ではなくて、本当に国家的な危機のような状況、本当に世界中から輸入もできないような状況、そういうようなことが起こったときにはこういう対応が可能ですよという体制をお示ししたものだというふうに理解をしておりますというふうにご答弁されていらっしゃるわけですね。今後、その基本法を見直されるときに、この食料自給力というのを何らかの形の指標として示されるということに、先ほども申し上げたように、もうそもそもの前提がこれはもう成り立たないのではないかということで、この点しっかりと見直しをしていただきたいということを、大臣、いかがお考えでしょうか。

○国務大臣(野村哲郎君)
わが国の食料安全保障の状況を把握、分析する指標としては、委員おっしゃいました食料自給率をはじめ、さまざまなものがありますが、各指標には一定の前提や限界もやはりある、伴うということを踏まえた上で、どのような指標がより有効であるか、今後もこの部会等を通じながら検討をさせていただきたいと思っております。

○石垣のりこ君
基本計画の中で、食料自給力指標が現実とは切り離された潜在生産力を示すものであると、現実と切り離されたというもう既に設定になってしまっているので、緊急時に使うということがこれは非常に現実的に、いくら仮定のものであったとしても考えなければいけないということで、これは確実に検討していただきたいというふうに申し上げたいと思います。安全、食料安全保障ということから、改めて農作業における事故発生状況について伺います。この農業発生現場での安全というのもしっかりと図られなくてはいけないと思うんですが、農水省は、2月10日に令和3年の農作業死亡事故についての取りまとめを発表しています。これ、内容について簡潔にご説明いただけますか。

○政府参考人(平形雄策君)
農水省では、毎年、厚生労働省の人口動態調査を基に農作業による死亡事故の全数調査を実施しておりまして、これによりますと、令和3年の死亡者数は242人、前年270人ですから漸減で、就業者10万人当たりの死亡者数は10.5人で、前年が10.8人でございますので若干の改善は見られておりますが、他産業に比べて依然高い状態にございます。

○石垣のりこ君
発表されているのは死亡事故だけなんですけれども、死亡までは至らなかった農作業事故についてはいかがでしょうか。

○政府参考人(平形雄策君)
それにつきましても、厚生労働省、警察庁等の関係省庁と連携いたしまして、農作業における労働災害、それから道路上での農業機械による事故につきまして、軽傷のものも含めて全数の報告、これを集めておりまして、これらの総数、近年ですと年間当たり大体1600件程度となっております。さらに、JAの共済連を通じまして、共済の加入者における事故情報、これも提供いただいておりまして、その件数についても、軽傷のものも含めて近年は年間4200件程度となっております。

○石垣のりこ君
これって公表されていますか。

○政府参考人(平形雄策君)
公表しているつもりなんですけど、していなかったらしっかり公表いたします。

○石垣のりこ君
つもりというのは、具体的にあるんですか。死亡事故としてプレスリリースになっているものは見たんですけれども、事前に伺ったときには、死亡事故は把握しているけれどもそれ以前の事故に関しての総数は把握されていないということだったんですけど、ちょっと事実確認をお願いします。

○政府参考人(平形雄策君)
分析結果について公表していて、今、私この申し上げた数字は分析の中では出てくるんですけれども、数字としてどこかに掲げているわけではないということだったので、すみません、これはしっかり出しておきます。

○石垣のりこ君
それは数字としては出ているけれども、具体的に、例えば死亡事故のような形で公表されていない、それを共有して、次の事故を防ぐための資料としてはまだ十二分に活用され切っていないのかなというふうに思います。これ、昨年の7月25日に農林水産省が開きました第6回農作業安全検討会に提出された参考資料、これ資料の③に入れていますが、中間取りまとめの取組状況によりますと、農業の労働災害発生件数は増加傾向にあるということなんですね。このうち、経験年数3年未満の未熟練労働者の占める割合が42%に上ると。農業機械事故に限って言えば、478件中218件で46%、未熟練労働者が事故に遭っているという集計が出ているということなんです。政府は、農業担い手を増やすために、地域おこし協力隊ですとか半農半Xとか農福連携とか外国人労働者とか、さまざまな多様な方が新規就農者として農業を支える仕組みというものを目指して取り組んでいらっしゃるわけなんですけれども、やはり食料安全保障を支える現場の安全を守るために、死亡者数だけではなくて、その前段に生じているであろうもっと多くのこういう農業現場の事故を積極的に把握して事故の原因を分析して、関係各所にフィードバックをして事故防止に努めていただきたいと思いますが、最後に野村大臣のご回答をお願いしたいと思います。

○国務大臣(野村哲郎君)
先ほど来いろいろお話がありますが、令和3年においては農作業事故による年間の死亡者数や就業人口10万人当たりの死亡者数は減少しつつあるということはありますけれども、他産業と比較しますと死亡者数の水準は依然として高い状態でありまして、死亡には至らない重傷、軽傷事故も数多く発生しているなど、農作業安全対策の強化は喫緊の課題だというふうに認識はいたしております。全ての事故情報を網羅的に把握することは技術的にも、先ほど来答弁申し上げておりますが、多くの課題があることですが、あるところですが、農林水産省においては、死亡事故に限らず、関係省庁や関係機関にもご協力をいただき、軽傷事故も含めた可能な限りの多くの事故情報を収集し、その分析を進めていく考え方でございます。

○石垣のりこ君 ありがとうございました。終わります。