参議院 本会議

6月11日 参議院 本会議で登壇、日本学術会議法案 反対討論
2024年6月11日 参議院 本会議 で登壇しました。ぜひ録画をご視聴ください。 
★Youtube録画 https://www.youtube.com/live/cmB23gXfb7I?si=titO_lo1iz8EDfkn&t=6814
★ツイキャスアーカイブ https://twitcasting.tv/norikorock2019/movie/817880674
★立憲民主党ニュース掲載
【参院本会議】日本学術会議法に反対、令和5年度決算、給特法について羽田次郎、古賀千景、石垣のりこ各参院議員が討論 https://cdp-japan.jp/news/20250611_9355

日本学術会議法案 反対討論

立憲民主・社民・無所属会派の石垣のりこです。会派を代表して政府提出の日本学術会議法案に反対の立場から討論を行います。

本法案が衆議院で可決された3日後の5月16日、日本学術会議の会員任命のあり方の法解釈に関する行政文書について、東京地方裁判所は政府に文書を全面開示するよう命じる判決を言い渡しました。政府は「本法案=新しい学術会議法案」と「現行の学術会議法の法解釈を巡る問題」は関係がないと主張していますが、詭弁を弄するにもほどがありましょう。日本学術会議が今後政府による干渉を受けずに独立した組織として運営される上で、政府がどのような考えのもとで6名の会員の選別を行い任命拒否に至ったのかを明らかにせずに、特殊法人という独立した組織形態になるから政府が干渉することはないなどどいうのは、片腹痛い屁理屈であります。公文書管理法において公文書を保存する目的は国及び独立行政法人等の有する諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることです。

公文書管理法第4条において、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう文書の作成を義務付けてもいます。つまり、意思決定に至る過程を検証する為にも未成熟な記載も含めて公開することが公文書管理法の目的にかなうのではないでしょうか。東京地裁の判決でも学術会議の会員の任免権に係わる法解釈の変更について、検討の過程を公にすることで得られる公益性は極めて大きいと指摘されています。

しかしながら、政府は情報公開法第5条第5号の規定を持ち出して「未成熟な記載があり、開示すると誤解や混乱を招く恐れがある」という、裁判所に一蹴された主張を繰り返すばかりでした。記載された内容が、情報公開法の不開示事由にあたり、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあると主張するのは、公開されると政府にとって不都合な真実が明らかになることを恐れているからではありませんか。仮に政府のご主張どおり、「不当に国民の間に混乱を生じさせる可能性」があるとしても、それでもなお、国権の最高機関であり、三権分立によって行政監視の責務を担う国会、とりわけ国民の代表である国会議員に対しては、黒塗り部分を開示する義務が政府にはあるはずです。ゆえに、我が会派から、委員会を非公開にすることと合わせ黒塗り部分を開示した文書を内閣委員会所属議員に提出し、審議せよと求めましたが、政府・与党は一顧だにしませんでした。「国民主権」「議会制民主主義」があまりに軽んじられていることに危機感を覚えます。

政府はまた、当該訴訟について控訴し、係争中であることも開示を拒否する理由としていますが、そうであるならば、裁判結果が出るまで審議を中断し、裁判結果が出てから判決を踏まえて審議を再開すべきであり、採決を行うなどもっての外であります。6名の会員任命拒否の理由説明並びに黒塗り文書を全面開示しないまま、政府から新たな学術会議法案の提出など厚顔無恥も甚だしいと言わざるを得ません。その上、採決を行なったことに強く抗議し、以下、法案の問題点を申し述べます。

日本学術会議がわが国の科学者の内外に対する代表機関であるためには、当然ながら学問の自由が保障されていること、自主性、独立性が必要不可欠であることは言うまでもありません。

政府はこれまで、法人化により学術会議の独立性が高まると説明するのみでありました。法案に「独立性」を明記しないのも当たり前のことだから記載する必要がないとしてきました。しかしながら、特殊法人として政府から組織を独立させることと、運営面で政府から独立して意思決定を行うこととは似て非なるものであります。確かに会計上、お財布は独立することになりますが、運営面において独立するとは言えず、むしろ、年度ごとに政府からの補助金を確保する必要が出ることから、かえって政府の意向を忖度せざるを得
なくなり、むしろ独立性が低下してしまうのではないかと懸念しています。

私たち立憲会派は、日本学術会議が確保を求めていたナショナル・アカデミーとして満たすべき5要件のうち政府提出法案では充足していなかった「国家財政支出による安定した財政基盤」「活動面での政府からの独立」「会員選考における自主性・独立性」の3要件も充足するよう、政府提出法案に記載されていなかった「独立性」を明記し、選定助言委員会の規定を削除するなどの修正案を提出しましたが、残念ながら、賛成少数で否決されてしまいました。

また、この法案の重大な問題として学術会議の会員の意向が無視されていることが挙げられます。法案提出に至るまでのプロセスについて、政府は、学術会議に丁寧に説明してきたと言っています。しかし、実態は「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」においては日本学術会議の光石衛会長は正規のメンバーではない陪席者としての参加であり、光石会長も衆議院の審議で「対等な関係ではなかった」と答弁しています。この答弁については不可解なことに参議院内閣委員会で私が質問した際には「自由に発言は出来た」と変わっており、政府による干渉や、干渉がないまでも政府への忖度があったのではないかと考えざるを得ず、審議の過程でもこのようなことが起こるようでは、この法案が成立した後、学術会議の独立性が保てるのか疑問を抱かざるを得ません。

有識者懇談会での対応を考えても学術会議と十分にコミュニケーションを取って、学術会議側の懸念事項をひとつひとつ解消していこうという姿勢ははなからなく、結論ありきで物事が進められてきたことがうかがわれます。坂井大臣は「学術会議は本案に反対ではない」との答弁を繰り返していますが、日本学術会議は4月15日の総会において、法案の修正を求める決議を102名の賛成多数で可決しています。

日本学術会議が相違として、提出された法案の修正を求めるという異常事態の中で法案の審議が始まったのです。この事実だけでも学術会議の意見を蔑ろにしていることは明らかですが、その後の対応は輪を掛けて酷いものでした。坂井大臣は6月5日の我が党の石川大我委員の質疑に対して「(学術会議から会いたいという)意向がなかったこともあったので行きませんでしたが、意向があると言うことであれば、お伺いをしてお話を伺いたい」と答弁しました。この答弁を受けて学術会議の会員有志が賛同者を募り、会員45名のん連盟による意見交換を求める要望書をお渡ししましたが、坂井大臣は「学出会議の正式な意向ではない」などど答弁し、日程調整をするまもなく、その日のうちに採決が行われたのです。学術会議の会員の声を無視し、会員の皆様のこれまでの貢献に対して一切敬意を払わない姿勢に強く憤りを覚えます。

さらには、衆参の審議の過程で坂井大臣から驚くべき見解が示されました。「特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は学術会議が解任できる」と答弁したのです。これは、思想信条の自由や学問の自由を脅かし、政治的介入の余地を作るものであり、この答弁自体が政治的介入そのものと考えます。坂井大臣は「仕組みを説明したもの」などと強弁しましたが、特定のイデオロギーや党派的な主張」を理由のひとつとして解任出来るとなったら、憲法が保障する思想信条の自由を大きく損なうことになるのは明らかです。憲法遵守義務を負う国務大臣の発言として許されるものではなく、坂井大臣には猛省を促し、あらためて発言の撤回を求めます。

ここで、議場の皆様におかれましては、1949年の日本学術会議の第1回総会で述べられた言葉を思い起こしていただきたいと思います。「われわれは、これまでわが国の科学者がとりきたった態度について強く反省し、今後は、科学が文化国家ないし平和国家の基礎であるという確信の下に、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せんことを誓うものである」と謳った「日本学術会議の発足にあたっての科学者としての決意表明であります。我が国の平和的発展と人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携し、学術の進歩に寄与する組織として日本学術会議が継続するためには、本法案を成立させてはなりません。熟議の府、良識の府であるこの参議院の議場に集う議員各位におかれましては賢明なるご判断をいただきますようお願い申し上げ、日本学術会議法案に断固反対の討論といたします。